環境調和型鉛フリー新快削ステンレス鋼 TICSを開発
ABSセンサーやHDD部品など、耐食性を求められる精密加工部品に使われる「快削ステンレス鋼」。その「削りやすさ」は、鉛(Pb)や硫黄(S)を添加することで得られています。しかし、優れた被削性を出せる鉛は、環境に及ぼす影響から使用規制の方向にあり、また、硫黄の添加では鉛を添加する場合に比べ、耐食性、冷間加工性、磁気特性で劣る欠点がありました。環境に優しく、しかも求められる特性を存分に発揮できる材料が求められていた中、鉛を使用しない「環境調和型新快削ステンレス鋼 TICS※1」が誕生しました。
耐食性(塩水噴霧試験)
「TICS」は、硫黄を従来のMnS(マンガンサルファイド)の形ではなく、チタンと炭素とをバランスよく添加することで「Ti炭硫化物」という安定した形で存在させています。これにより、硫黄を添加する場合の欠点を克服し、鉛と同等以上の被削性を得ることに成功しました。「Ti炭硫化物」を快削ステンレス鋼に応用するのは世界で初めてのことです。
※1 東北大学石田清仁教授、経済産業省東北工業技術研究所及川勝成主任研究官、東北特殊鋼株式会社、当社の共同開発によるもので、本間発の一部はNEDO(新エネルキー・産業技術総合開発機構)、JSPS(日本学術振興会)の2000年度共同公募プロジェクト「マッチングファンド方式による産学連携開発事業」※2として実施されました。
※2 大学などの研究技術シーズについて、産業界での実用化・事業化を図るための、大学などと企業との共同研究に対しNEDO、JSPSが共同でプロジェクトを公募・選定し、研究資金を供給することにより支援を行う事業。
(ふれあいDAIDO 2001年4月号から)