大労働争議発生、出荷拒否事件に発展

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大労働争議発生、出荷拒否事件に発展

新大同製鋼(株)発足に伴う工場の整理集約は、人員の配置転換などさまざまな労働問題を抱えた中で進められましたが、資金繰り難による賃金の遅配解消も完全に解決しておらず、組合側の不満も募る一方でした。そのような状況下、1950年4~6月の奨励給方式の決定に際し、星崎工場分会は「労働強化を強いるとともに事実上の賃下げにあたる」と主張、さらには1~3月の奨励給支給に対しても不満を訴え、会社側との交渉も決裂、闘争機運が頂点に達しました。

1950年4月18日、星崎分会は「基準給の3,000円引上げ、労働協約の即時締結」の要求書を提出。次いで24日に大江工場分会、5月15日に築地工場分会も同様の要求書を提出し、同日3分会が一斉に1時間ストに突入。さらに18日に熱田工場分会、23日安城工場分会、30日連合会、6月1日には川崎工場分会も要求書を提出するに至りました。団体交渉も決裂を繰り返し、スト行為も継続、組合は「出荷停止」の実力行使に及び、抗争は泥沼化しました。

トラック前に座り込み、出荷を阻止

そして、ついに6月16日に警察官約600名が出動し、出荷妨害行為を排除する事態に至り、未曾有の大争議に発展しました。また、このころ星崎工場を中心に原因不明の火災事故が頻発、6月10日未明には星崎工場の2階建て事務所と組合会議室が全焼。このように厳しい状況が続きましたが、組合内の穏健派の台頭もあり、星崎工場では一部作業を開始、材料搬入のため一部の門を開放するなど平穏な空気が流れ始めました。その後、組合側が5月分賃金の支払い仮処分申請を名古屋地方裁判所に提訴、6月22日には先に会社側から出されていた出荷妨害排除の仮処分申請と同時審尋が同地裁により実施され、実地検証に及びました。この間、組合幹部は出荷停止戦術による影響のあまりの大きさ、そして、争議が会社を破滅に導くほかないことを会社側の勧告により認識を新たにし、星崎分会は独自に解決策を立てることを決意し、賃金遅配の早期解消など5項目の協定事項を提示、歩み寄りの姿勢を見せました。

2カ月以上にわたり展開された抗争でしたが、「4月分賃金残額および5月分基準賃金を6月30日までに支払うよう努力する、団体交渉を再開して誠意をもって要求項目の解決にあたる、法廷闘争を双方取り下げる」という協定事項を各分会が次々と承認、6月28日の星崎、大江分会の承認を最後に、出荷停止を含んだ大争議は終結しました。この争議は従来の組合運動のあり方を反省するきっかけとなり、組合活動が労使協力の方向へと大きく前進を遂げる転換点となりました。

星崎工場出荷拒否解除(全員大会)
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